北方領土ビザなし交流事業に参加して
掲載日:2012.09.21
1991年9月14日、日ソ両外相間の往復の書簡により、領土問題解決までの間、相互理解の増進を図り、領土問題の解決に寄与する事を目的として、ビザなし交流の枠組みが作られました。そして、1992年4月から21年間もビザなし交流事業が行われています。この間に積み重ねて来た北方四島在住ロシア人との相互理解と友情は大変に大きな成果であります。
今回、私がホームビジットでおじゃました農業を営むお宅のご主人も「日本人と一緒に住めたらいいな」とおっしゃっていました。このご主人は積極的に訪問団を受け入れて下さり、日本の子ども達のホームステイという形での滞在も受け入れて下さっているそうです。ご自身も日本にいらした事があるそうで「札幌には友達がいる」とおっしゃったので「今日私がお訪ねして、また一人、札幌の友達が増えましたね!」と言ったら、大変喜んで下さいました。
ロシアは「クリル発展計画」として、島のインフラ整備などを行い、自国の領土である事をアピールしようとしています。私たちも今回の訪問では、きれいに舗装された道路、新しい学校、保育園と幼稚園が一緒になった新しい立派な施設、スイス製の機械を導入した缶詰工場などロシアの行政府が組んだスケジュールで見学しました。行政の方達は「私たちは日本の援助がなくても大丈夫」ということをアピールしたかったのかもしれませんが、私は逆に「日本の技術が必要だ」と思う事が多々ありました。
また、今回は環境、特にゴミ処理やリサイクル、日本の離島でのゴミ処理について日本の取り組みをご紹介しましたが、島の方達は興味深く聞いておられました。島にはゴミ処理場もなく、ゴミ捨て場に分別されていないゴミが山のようになっていて何とも言えない異臭を放っています。また、一見美しい海岸もよく見るとゴミだらけ。清掃活動をしましたが拾っても拾ってもきりがないといった感じでした。この状況を島の人たちはどう思っているのですかと聞いてみると「恥ずかしいけれど、自分のところさえきれいであれば他のところは気にしない。この島の人たちにはそんな事を気にするようなマインドがない。」と言われました。このままでいくとあの自然豊かな美しい島がゴミの島になってしまいます。
さらに、海岸線には使われなくなった船が何艘も捨てられていて、真っ赤に錆び付き、船の墓場のような光景でした。海も間違っても泳ぎたいとは思えない状態でメタンガスが発生していて、気持ちが悪くなるほどの嫌な匂い。海水もかなり汚染されています。生活排水や、水産加工場の廃液が海に垂れ流されていたり、廃棄物も海に投棄されているようです。日露二国間で環境を守る為に早急に調査をし、データ化して、これ以上環境汚染が深刻にならないように、日本の技術も取り入れながら「私たちの領土」を守って行かなければなりません。1日も早い返還を望みますが、環境を守るという観点からの協力はまた新しい切り口かもしれません。